1. プロジェクト概要
本プロジェクトは、迷惑路上飲酒が常態化している渋谷駅周辺地域において、より安全で快適な環境を提供し、区民の皆さまのウェルビーイング向上につなげる施策立案を目指し、データの収集及び安全対策を行うものです。
2. 背景と課題認識
渋谷駅周辺で迷惑路上飲酒が常態化し、これに起因するごみの放置や騒音などのトラブルが深刻化しており、令和6年10月1日より公共の場所における飲酒を通年で禁止する条例を施行しました。しかし、依然として路上飲酒者が確認されており、毎晩、渋谷区が安全・安心パトロール警備事業(以下、パトロール隊) として迷惑路上飲酒の自粛要請活動を行っている状況です。
そこで、スタートアップのテクノロジーを活用することで新たな解決策を検討するとともに、既存の対策チームとの連携を行うことで、既存の警備体制の効率化を図ることとなりました。
3. 実施内容
本プロジェクトは、一般社団法人渋谷国際都市共創機構(SII)の会員プロジェクトとして、東急株式会社やNTT東日本株式会社などの会員企業、スタートアップ2社(行動認識AI技術の株式会社アジラ、ニューロミュージック技術のVIE株式会社)、そして渋谷センター商店街振興組合の協力を得ながら渋谷区と連携して進めました。

2025年11月から2026年4月にかけ渋谷駅周辺エリアで実証を実施し、主に次の二つの技術ソリューションの効果を検証しました。
・ 行動認識AIの滞留者検知によるパトロール隊の効率化
センター街の防犯カメラにて、株式会社アジラが開発する行動認識AIシステムで映像を解析して一定時間以上滞留する路上飲酒者を自動検知しました。検知情報をパトロール隊にリアルタイムで共有し、検知データを曜日・時間帯ごとに分析して路上滞留発生のヒートマップを作成し、曜日別・時間帯別の迷惑行為と思われる事象の傾向を可視化しました。これにより、データに基づき警備員配置や巡回時間帯等を効率化することに貢献しました。
・ ニューロミュージックによる自粛要請活動支援
センター街一角に指向性スピーカーを設置し、VIE株式会社が開発する脳波をリラックス状態へ誘導するとされるθ波(シータ波)帯域のニューロミュージックを、特定の範囲にだけ聞こえるように再生し、滞留状況への影響を検証しました。
実証では約2週間にわたり現地検証を実施しました。再生エリアは路上飲酒者の溜まりやすい場所に限定し、周辺の店舗や通行人には影響を与えないよう音量とスピーカーの向きを調整しました。また、行動認識AIシステムの検知データと照合することで、音楽の有無による滞留者数の変化を定量的に測定しました。

4. 成果と示唆
・ データ活用による警備運用改善
行動認識AIによる検知データの蓄積・分析により、深夜帯の「いつ・どこで路上滞留が多発するか」を定量的に把握できました。路上滞留発生のヒートマップには、現場から「滞留の発生が多い曜日や時間帯がパトロール隊の体感と合っている」、「データで可視化することで、次の警備計画作成に活かせるのではないか」「警備員を必要時に重点配置する方針を検討できた」など反応がありました。データに基づいた業務効率化・負担軽減を目的としたパトロール体制の改善策を提案することができました。
・ ニューロミュージックを活用した滞留抑止
ニューロミュージック(脳波に作用する音楽)の現地実証では、深夜0時~1時台に路上滞留者数が平均で約7割減少が確認され、抑止効果が示唆されました。特に周囲が静まり返る深夜1時前後は音楽の効果が最大となり、統計的にも有意な差が確認されています。雨天など元々人出が減る条件を除いても平均3割以上の減少が記録されており、効果が期待されました。一方、比較的賑わいのある時間帯では大きな変化が見られない場合もあり、更なる検証や運用条件の調整によって、より安定した効果発現を目指す必要があると考えられます。
・ 官民共創プロジェクトのモデル化
本プロジェクトは、行政・民間企業・地域団体が一体となって課題解決に取り組んだ官民共創モデルとして、SIIに集う会員企業のリソースを基盤に、スタートアップ2社(株式会社アジラ、VIE株式会社)の革新的技術の実証が可能となりました。こうした多様な知見とテクノロジーの結集が成功の大きな要因となったほか、行政と民間が現場課題を共有し解決策を創出したプロセス自体が、スタートアップの社会実装を後押しする良い前例となっています。本プロジェクトで得られた知見は、他地域での路上喫煙や深夜騒音など他の都市型迷惑行為にも応用可能な普遍モデルとなる可能性を秘めています。
5. 今後の展望
今回の実証には、他地域からも高い関心が寄せられており、本実証で得られた知見を「渋谷モデル」として体系化し発信することで、路上喫煙や深夜騒音等の類似する都市課題への横展開も視野に入れています。今後も、SIIおよび参画企業は、行政・地域団体等との連携を図りながら、今回の実証で得られた成果と課題を踏まえ、安全安心で持続可能なまちづくりに貢献していきます。




